“ We Art India ー アートプロジェクト 2025 ” 報告 VOL.1

“ We Art India プロジェクト2025 ”
◆ インド・ダージリンでのアートプロジェクト — Betten High School
種を描く、根がのびる。絵がつながる。――tane.no.e ワークが生んだ時間
今年は “We Art India プロジェクト 2025” を実施しました。
今回のインド滞在のアートイベントは、ダージリンから始まりました。
関西空港を出発し、デリーへ。
そこから国内線に乗り継いで約2時間、さらにジープで山道を走ること3時間半。
標高2,000mの空気が薄い山の上に、紅茶の名産地として知られるこの街はあります。
霧に包まれた急斜面の生活、濃い緑の丘陵、朝陽がヒマラヤの稜線を縫う光景は、
日本では簡単に想像できない “世界のかたち” を教えてくれます。





その土地で、私はまずBetten High Schoolの7年生〜9年生 35名の子どもたちとTane.no.e(種の絵)アートワークを行いました。
種を描き、根を描き、幹や枝、葉を描く。
その成長する線が、隣の人の絵へと伸び、また別の生徒の根や枝と交わっていく。
自分の成長と他者の成長が、一本の世界に混ざり合う。校庭に机を並べてそこに大きな布に絵を描く。
大布はやがて互いの存在をつなぐ“森”になっていきました。
この学校を支援しているのは、今回のプロジェクトで協力をしてくれたNPO法人 IMAGINUS と関係のある John。
インドでは美術教育の機会が非常に少なく、
「見たものを上手く描く」ことだけが“絵”だと教わる子どもが多くいます。
絵の具を使ったことがない生徒も珍しくありません。
そこで私は、日本からアーティストとして訪れ、
“正解ではなく、自分の思いから絵が立ち上がる瞬間”を一緒に体験することを目的にしました。
初めての「自由」は最初、静かに始まる
とても静かでした。
絵の具の蓋をあけても、筆に色を含ませても、生徒たちは小さく息を止めるように迷い、手が前へ進みません。
私は小さく種の輪郭を描き、
「あなたの根はどこへ伸びる?」と声をかけました。
その質問に応えるように、一本の線がゆっくり伸び、
さらに別の子の紙へとつながっていく。
その瞬間、子どもたちの表情がふわっと変わりました。
次第に速度は上がり、
「もっと描いていい?」
「他の色を貸して」「この枝はあなたの絵につなげていい?」
— そんな言葉が自然に交わされ始めます。
色を塗る手は止まらず、
“上手に描かなきゃ”から“今ここを描きたい”へ。
子どもたちは夢中になり、
時に私の絵を呼んでアドバイスを求めてくれました。















絵が終わったあとに生まれる距離
ワークが終わる頃には、
互いの描いた絵を見ながら笑い合い、
「見て、私の根はここまで伸びたんだ」と誇らしげに話す。
絵はただの色の集合ではなく、
自分の存在の“歩き方”を語るものになっていました。
教員との距離も自然に縮まりました。
最初は「日本から来たアーティスト」という位置にいた私へ、
子どもたちと教師は、同じ制作者として声をかけてくる。
教室に“上下”ではなく“共創”が立ち上がる瞬間でした。









美術は「模範」ではなく「発芽」である
このプロジェクトの目的は、絵を上手に描かせることではありません。
アートは、自分の視点が世界へ伸びていく方法です。
その根や枝が他者につながるとき、私たちは世界の中に自分を見つけ、同時に他者の存在を肯定します。
tane.no.e の森は、今回も静かに始まり、最後には教室いっぱいに広がりました。
その森を育てたのは、私ではありません。
一歩踏み出した子どもたち自身です。
- 活動期間:2025年11月(インド・西ベンガル州/ダージリン)
- 主催・連携:NPO法人 IMAGINUS
- アートワーク指導:沖 明日香(Asuka Oki)
- 参加者:Betten High School 7–9年生 35名、
- 支援・協力:John (現地スタッフ) ならびに学校関係者
- 活動目的:
- 美術教育が不足する地域における“創造体験の媒介”
- 描く主体の生成とローカルへの技術移譲
- 子ども・教育者・地域住民の間に継続的な創造の回路を形成すること
次回は“ We Art India ー アートプロジェクト 2025 ” 報告 VOL.2は
シリグリでのアートワークイベントです。
VOL.2では、子どもたちと先生が自分の顔を彩った
“- kao・no・e – ワークアート”の現場へ。
その表情を、ぜひ見てください。
この記事書いた人 かっちゃん先生


